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このページでは当工房で使用している砥石の中から主に天然砥についてご紹介させていただきます。 天然砥は一丁ごとに微妙に違いがあり、同じ砥石でもお預かりする御刀に合わせて数種類は用意しています。 また、ここにご紹介できなかった各地の天然砥なども当工房では使用していますが、ここでは比較的知名度の 高い砥石についてご紹介します。
(砥石の販売は行っておりません)
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画像 | 名称 | 備考 |
荒砥(平島砥) |
荒砥の一種で大変に粗い砥石です。 打ち卸しの新作刀や著しい深錆刀の整形にのみ用います。 また、刃艶、地艶を薄く擦る際にも用います。
長崎県産 #120 |
大村砥 |
荒砥の一種で和歌山県が産地。 比較的柔らかい砥質ですので整形には使用せず、主に地刃不明の赤錆刀の焼刃の確認や刃艶、地艶を薄く擦る際に用います。
和歌山県産 #220 |
備水砥 |
通常の整形や錆び切りにはこの備水砥から着手します。 以前は伊予砥という砥石が用いられていましたが、産出されなくなり代わって備水砥 が用いられるようになりました。 この天然備水砥を用いて研いだ刀とそうでない刀では 仕上がり後に拭った時の感触が違うと言われるほど重要な砥石です。
熊本県産 #400 |
天草砥 |
備水砥とほとんど同じ砥質ですが、備水砥よりも粗いので、荒砥をかける必要はないが備水では取れずらい錆びの除去や整形に用います。
熊本県産 #320
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五十嵐砥 |
備水砥とほとんど同じ砥質ですが、備水砥よりも硬質ですから主に棟や鎬地、三つ角などの稜線を決めるために用います。
新潟県産 #400 |
佐伯砥 |
今ではほとんどない砥石で改正砥と備水砥の中間くらいの粗さです。 やはり整形の際に使用しますが、小柄小刀の研磨に用いております。
京都府産#600
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夏屋砥 |
最近入手し、使い始めた整形用の天然砥石です。 左2丁は比較的軟質ですが効き も良く重宝しています。 元来は一般刃物用の中砥ですが、日本刀では備水と改正の中間的な粗さです。
岩手県産 #400~600 |
改正名倉砥 |
備水の砥目を抜く為の砥石です。今では採掘が終わり、採掘場所は現在高速道路 の下になってしまったそうです。 昔は青い色をした良質の改正砥があったそうですが、今現在のものは写真のような茶色ばかりです。 比較的柔らかく、粘土質が多いです。
山形県産 #600~#800 |
会津砥 |
改正名倉砥と同じ粗さですので改正名倉砥の代用として重宝しています。 稜線や角を決める際にはむしろ改正名倉砥よりも向いているようにも思います。
福島県産 #600~#800 |
沼田砥 |
会津砥同様に改正名倉砥の代用として使っております。 沼田とは私の住む群馬県の地名で言わば郷土砥石。 今では採掘も終了しており貴重な砥石といえるでしょう。 砥石の効き具合、硬さも改正名倉砥に勝るとも劣らない良質の砥石だと思います。
群馬県産 #600~#800 |
中名倉砥 |
愛知県から取れる砥石です。 この中名倉砥で改正砥の砥目を抜きながら最終的な整形を行います。 ハリ気が多いので充分な砥石管理が必要です。 砥石屋さんのお話では採掘が終了してしまったそうです。
愛知県産 #1000~#1200
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細名倉砥 |
中名倉砥と同じ岩盤から取れる砥石です。 層が違う為、中名倉砥よりも硬質できめが細かいです。 精密機械の研磨用などにも使用されたそうです。 現在は採掘されていませんので大変貴重な砥石で且、研磨には非常に重要な砥石です。 写真左2丁は白口、右2丁が縞といわれる細名倉です。
愛知県産 #1500~#2000 |
内曇り刃砥 |
下地研磨の最終工程に用いる砥石です。 刃砥は柔らかい内曇砥を使用し、地刃全体にかけて細名倉の砥目を 取り除き、同時に刃の働きを最大限引き出すようにこころがけます。 最近は刃砥用の良質の内曇砥がなかなかないのが現状です。
京都府産 #3000~#5000 |
内曇り地砥 |
地金の部分に専ら使用する内曇砥で、比較的硬質です。 刀に合わせて数丁必要です。 地砥を引くことによって刀工の鍛えた肌が鮮明に現れてきます。
京都府産 #3000~#5000 |
巣板 |
良質の内曇刃砥がなかなかないので代用品としてこの巣板を使う場合もあります。 巣板は内曇砥と同じ岩盤の別の層の砥石ですので研ぎ味も内曇砥に良く似ています。 刃の硬い刀などには重宝しますが微妙な点でやはり内曇砥の方が勝っていると思います。
京都府産 #3000~#5000 |
青砥 |
主に刃艶や地艶の厚さを整える際に使用します。 刀身自体の研磨には用いません。 一般刃物の研磨では中仕上で使う砥石だそうです。 当工房でも白鞘製作時の鑿や 鉋の中研ぎに使います。
京都府産 #3000 |
対馬砥 |
内曇砥の面擦りに用いる砥石です。 この砥石をナイフで削って粉末にし、金肌の代 わりに拭い材料とすることもあります。(対馬拭い) 一般刃物の研磨では合砥の面擦りにも使うそうで、1寸角のものが2000円位で売っているのをよく見かけます。
長崎県産 #3000 |
刃艶と地艶 |
仕上研磨の際に使用する刃艶と地艶です。 左のグレー色のものが刃艶で、内曇砥を薄く割ったものに和紙を漆で裏打ちしています。 右の黄褐色が地艶で、鳴滝砥を薄くしただけのものと、薄くした上でさらに和紙 を裏打ちしたものと二通りあります。 これらの選択には吟味の上に吟味し、御刀に最適な艶を使用します。 |
一振りの日本刀が仕上がるまでには上記のような天然砥石以外にも磨き棒、金肌、磁鉄鉱など多くの道具が必要です。
特に良質の天然砥は絶対に必要ですが、採掘が終わってしまった貴重な天然砥石もあります。
美しい日本刀の為にも貴重な天然砥石を大事にしていきたいと思います。
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研師 柿沼進一
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